リオオリンピック開催前に話題になった「ジカ熱」。日本人にとってはあまり馴染みのない病気です。ジカ熱はウイルスを持っている蚊が人を刺すことにより感染してしまう病気です。命に関わることはないものの妊娠を希望している女性は注意したい病気です。感染源は限られているので、知識があれば自己防衛することも可能です。
今回はジカ熱の基本的な知識と、対策方法を解説します。
ジカ熱とは?
ジカ熱の正式名称は「ジカウイルス感染症」。その名の通り、ジカウイルスへの感染によって発症します。ジカウイルスはアフリカ大陸のウガンダで見つかったウイルスで、ネッタイシマカなどの蚊によって媒介して感染が広がります。ネッタイシマカに関しては日本に生息していませんが、ヒトスジシマカは北海道と東北以外に広く生息しています。
ジカ熱は中南米に感染が拡大しており、100-150万人が感染している疾患です。感染が拡大している地域への渡航はできるだけ避けましょう。
ジカウイルスに感染すると、2日から2週間程度の潜伏期間があります。感染者の2割程度に症状があらわれ、重症化することはごく稀で発症する方が少ないウイルスです。感染から1週間ほどは血液中にウイルスが留まり、その間に蚊に刺されると感染が広がってしまいます。
症状自体は軽く自然に治るものですが、感染してしまったらそれ以上の感染拡大を防ぐ必要があります。現在のところ、当該地域に旅行した日本人を除き、日本国内での感染例はありません。
ジカ熱の症状と感染経路
ジカ熱の症状
ジカ熱の症状は数日から1週間程度継続し、自然に治ることが多いようです。ジカ熱にかかると下記の症状があらわれます。
・発熱
・倦怠感
・関節痛
・結膜炎
・発疹
一度でもジカウイルスに感染すると体内で抗体ができ、その後発症する可能性が低いと言われています。
ジカ熱の感染経路
ジカウイルスを持っている蚊に刺されることで感染します。感染者の体内にウイルスが残った状態で違う蚊に刺されると、その蚊から他の人にも感染します。また、わずかながら性行為を通じて感染した例もあります。
ジカ熱はネッタイシマカかヒトスジシマカが運びます。ヒトスジシマカは秋田県以南、日本の広い地域で生息しています。初夏から秋口にかけて、比較的気温の高い時期に活動します。ヒトスジシマカの生息域が非常に広いため、感染者が出張や旅行すると遠く離れた生活圏の人にも感染する恐れがあります。
妊婦への影響
ジカ熱は男女ともに感染する疾患で、あらわれる症状も同様です。しかし、妊婦には悪影響を及ぼす危険性があります。ジカ熱の感染が流行している地域において、赤ちゃんの「小頭症」「ギラン・バレー症候群」が急増しています。
ジカ熱との関係性は未だ明らかになってはいませんが、お腹の中の子供に影響が出る可能性があります。
小頭症
赤ちゃんの頭が生まれつき小さい、または生まれてから頭の成長が止まる疾患です。てんかん・難聴・学習障害・脳性麻痺などを発症する可能性が高まります。アメリカの研究機関では、ジカウイルスが小頭症になる原因の一つであると発表しました。
ギラン・バレー症候群
手足のしびれ・力が入らない・手足の痛みなどの症状が出ます。悪化すると、食べ物を飲み込んだり声を出すのが難しくなる場合もあります。ジカ熱の感染拡大とともに増加しており、関連が研究されている最中です。
ジカ熱の有効な予防法
虫除け対策をする
ジカ熱は「蚊に刺されないこと」が一番の対策です。スプレータイプの虫よけや虫の嫌がる香りのグッズを持ち歩きましょう。アウトドアやレジャーの際には入念に準備しましょう。虫除けスプレーやクリームはこまめに塗りなおし、正しい使用法を守ります。
窓を開けて寝る場合は、蚊取り線香や電動香取りなどを使用し、蚊を寄せ付けないようにします。スプレーで蚊を撃退できる薬剤も売っています。
肌を露出しない
蚊に刺されないよう、蚊が活発になる時間帯や場所では不必要に肌を露出しないよう意識します。長袖の服を着用する、タオルを巻くなどして、できるだけ肌を覆います。裸足でのサンダル履きも避けます。
身の回りの水場を確認
ご存知かと思いますが、蚊はどこにでもいる虫で家や学校にも発生します。蚊は狭い水のある場所に産卵して繁殖します。家の中や庭など、身の回りにある水たまりを点検しましょう。
・植木鉢
・水の溜まったバケツ
・使用済みタイヤの溝
・空き缶
・使っていない水槽
など、水が溜まりやすく屋外に設置するものが蚊の繁殖場所になり得ます。
流行地域へ行かない
ジカ熱の感染者が多い地域には、できるだけ行かないようにします。厚生労働省や政府のWebページで、流行している地域が公表されています。中南米・オセアニア・一部のアジアに感染が広がっています。妊娠中や妊娠を考えている女性は渡航を避けましょう。
止むを得ず感染地域に行く場合は、蚊に刺されないよう対策をしっかりと行い、帰国後も2週間程度は十分に注意します。渡航中に発熱など、ジカ熱らしき症状があらわれたら、帰国する際に医療機関を受診しましょう。