ちゃんと毎日休息をとっているのに疲れが残っている、毎日なんとなく体がダルい、そんな経験のある方も多いですよね。
でも、もしいつまでたってもそんな疲労感や倦怠感が抜けず、日常生活にも支障が出てしまうようであれば、それは単純に疲れがたまっているのではなく、「慢性疲労症候群」という病気かもしれません。
「慢性疲労症候群」は、国際的な診断基準ができたのが1988年、日本で症例が報告されはじめたのも1990年代頃からと比較的新しい病気です。しかし、現在でも患者数は増加を続けており、最近では特に若い女性の罹患数が増えています。
「慢性疲労症候群」とは一体どのような病気なのか?その原因や症状、若い女性がかかりやすい理由や回復方法(治療法)など、 慢性疲労症候群について詳しく紹介します。
慢性疲労症候群とは?
慢性疲労症候群とは、読んで字のごとく慢性的な疲労感が続く病気です。具体的には、身体を動かすのも辛いような疲労感や身体の痛みが6ヶ月以上(小児の場合は30日以上)続くと慢性疲労症候群と診断されます。
英語ではChronic Fatigue Syndrome(コーニック・ファティーグ・シンドローム)といい、頭文字を取って「CFS」とも呼ばれます。
ただ疲労感が取れないだけでなく不眠や摂食障害を伴うこともあり、日常生活にも支障が出ますが、血液検査など様々な精密検査を受けても異常は見つからないという特徴があります。
激しい運動や体力仕事、お酒の飲み過ぎなど、特に思い当たる原因もないのに1週間以上疲れが続く場合は慢性疲労症候群を疑ってみましょう。
慢性疲労症候群の原因と症状
慢性疲労症候群の原因
慢性疲労症候群の原因は、まだ明らかになっていません。しかし様々な研究により少しずつそのメカニズムがわかってきました。
ストレスを受けることで自律神経が乱れると、内分泌に異常があらわれたり免疫力が低下して、体の中に潜んでいたウイルスが活発に動き出します。これに対抗するために体が免疫物質を大量に生成し、この過剰な免疫物質が脳のはたらきにまで作用して、強烈な疲労感をはじめとする様々な症状を引き起こすという説が、現在有力視されています。
また、慢性疲労症候群患者はある特定の遺伝子に異常が見られることや、患者の半数以上がアレルギー体質であることも報告されており、現在関連の有無が研究されている最中です。
慢性疲労症候群の症状
慢性疲労症候群の症状としては、原因が不明で日常生活にまで支障の出るような強烈な倦怠感以外に、以下のような症状があらわれることが多いです。
・非常に疲れやすい
・集中力や思考力、記憶力の低下
・解熱剤でも下がらない微熱が続く
・風邪を引いたときのような頭痛や喉の痛みがする
・リンパ節が痛む
・寒気や悪寒
・全身または身体の一部に筋肉痛のような症状があらわれる
・関節痛や肩凝り
・脱力感
・不眠や過眠
・うつ病のような気分障害
普通の疲労や体調不良と違い、「症状が半年以上続く」「原因がわからない」「病院で検査をしても異常が見つからない」といった特徴があります。
重症化すると、寝たきりになってしまったり脳に炎症が引き起こされる恐れもあります。
慢性疲労症候群が若い女性に増えている?!
慢性疲労症候群を発症している人の約60~70%が女性で、罹患する確率も男性の約1.5倍になるとされています。また、罹患している女性のほとんどが20代~40代という若い世代です。
若い女性に慢性疲労症候群が増えている理由として、以下のようなことが指摘されています。
・女性は男性より持久力が低く、長期的なストレスに弱い。また、女性は愚痴を言って共感されることでストレスが解消される傾向があるが、会話を楽しむ時間や相手がいないとストレスを溜め込んでしまいやすい
・若い世代の女性は結婚や出産でストレスを溜めやすく、家事・育児・仕事に追われてストレスの発散ができなくなる
・女性には生理によるホルモンバランスの周期的な変化があり、時期により非常に精神的ストレスを溜めやすい
・無理なダイエットによる栄養の偏り
こういった理由により、女性は精神的ストレスを溜め込みやすく、それが上手く解消できない状態が続くと慢性疲労症候群を発症してしまうと考えられています。また、人の気持ちを察する能力に優れた女性は、男性より2倍精神的なストレスを感じやすいというアメリカの調査結果もあります。
でも、慢性疲労症候群は周囲からの理解を得られにくく、その名称から「単純に疲れが取れないだけ」と思われがちです。起き上がることも辛いような症状に襲われていても、周囲からは「疲れているのは皆同じ」「サボっている」と見られてしまい、そのストレスで症状がさらに悪化したり、うつ病や不安障害を併発してしまうことさえあります。
慢性疲労症候群の回復方法(治療法)
慢性疲労症候群は、一度発症すると自然治癒は非常に難しいため、病院での専門的な治療が必要です。
まずは内科で体に異常がないかどうかを検査してもらいましょう。場合によってはMRIやCTスキャンを勧められるかもしれません。体調不良や疲労感の原因が何も見つからなければ、「慢性疲労症候群」と診断されます。
慢性疲労症候群と診断を受けたら専門医を受診することになりますが、原因不明で治療法も見つかっていないため、残念ながら知識のない医師や慢性疲労症候群を病気と認めていない医師も存在します。回復のためには、インターネットを使うなどして慢性疲労症候群に対する知識や理解のある医師・病院を探すことが大切です。
科としては、心療内科や精神科が良いでしょう。ごく少数ですが、大病院の中には慢性疲労症候群の専門外来を設置しているところもあります。
病院で受けられる治療法としては、
・免疫力や回復力を高める投薬治療
・身体を温めることで体を緩ませ、新陳代謝も活発にして免疫力を高める温熱療法
・気分障害や不安障害に対する抗うつ薬や抗不安薬の投薬治療
・疲労をコントロールするための認知行動療法
など、様々なものが挙げられます。
自分に合った治療法を主治医とともに模索していきましょう。
慢性疲労症候群と間違われやすい病気
慢性疲労症候群は、まだまだ新しい病気で知識のある医師が少ないということに加え、あらわれる症状にかなりの個人差があり、喉の痛みや微熱といった風邪のような症状や筋肉痛、関節痛や睡眠障害、気分障害など、ほかの病気と類似症状が多いため、誤診されてしまうことが多くあるのです。
また、ストレスや体質が元で発症する「心身症」や「うつ病」、「副腎疲労症候群」、同じく原因不明の不調である「身体化障害(ブリケ症候群)」や「自律神経失調症」、「筋繊維痛症(FMS)」など誤診される病気も多く、特に症状が類似している筋繊維痛症は、慢性疲労症候群と同一視されることもあります。
数ヶ月治療を続けても症状が改善されない場合は、治療法を変えてもらうか、セカンドオピニオンを考えてみてください。