おたふく風邪によって引き起こされる「ムンプス難聴」とは?

おたふく風邪という言葉から何を思い浮かべますか。子供の頃にかかる、耳の下がぷくっと腫れる病気、誰でも1度はかかるもの、とそれほど重大な病気ととらえていない方も多いかもしれません。しかし、おたふく風邪が原因で耳が聞こえなくなることがあるのです。

今日は小さいお子さんがいる親御さんには是非知っておいて欲しい、おたふく風邪によって引き起こされる「ムンプス難聴」についてご紹介します。

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「ムンプス難聴」とは?

おたふく風邪はムンプスウイルスに感染することによって発症しますので、このムンプスウイルスによって引き起こされた難聴を「ムンプス難聴」と呼んでいます。

おたふく風邪にかかった全ての人が耳に異常があらわれる訳ではありませんが、数百人に1人の割合でムンプス難聴にかかる人がいます。おたふく風邪は大人でもかかることがありますが、患者さんの多くは2歳から中学生くらいのまでの子供です。ムンプス難聴はこの年齢層の中でも特に5~9歳に多くみられます。

おたふく風邪によって引き起こされる「ムンプス難聴」とは?

ムンプス難聴の原因と症状

ムンプス難聴はムンプスウイルスが内耳まで感染することによって発症します。内耳には有毛細胞という音の情報を脳に伝える働きをする細胞があるのですが、この有毛細胞がムンプスウイルスによって攻撃されてしまうことによって音を感じにくくなってしまうのです。

ムンプス難聴は多くの場合は片耳のみで発症します。両耳で音を聴きとることができないため、音がする方向が分かりにくかったり、難聴を発症している側の小さな音は聞き取れないなどの症状があります。しかし、ムンプス難聴を発症する人の多くが子供であるため、症状を上手に伝えられなかったり、片耳は聞こえるため、周囲の人間が気付くのが遅れることが多々あります。子供がおたふく風邪にかかった場合には、聴力が低下していないか、しばらくの間、注意深く観察する必要があります。

また、ムンプス難聴は発熱や耳の下の腫れなど、おたふく風邪の特徴的な症状が現れないとされる不顕性感染で発症することも。周囲でおたふく風邪が流行していて、子供の聞き取る様子に異変を感じた場合には耳鼻科を受診するようにしましょう。

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ムンプス難聴の治療

ムンプス難聴にかかってしまった場合、残念ながら有効な治療法はありません。ムンプス難聴は、殆どが片耳のみの発症ですので、音が聴き取れる方の耳を大事にしていくことが大切です。子供の年齢が小さいうちは、中耳炎など耳のトラブルを起こしやすいので特に注意してあげましょう。

おたふく風邪によって引き起こされる「ムンプス難聴」とは?

ムンプス難聴は予防が大切!

ムンプス難聴には治療法がありませんので、ムンプス難聴にならないようにするためには、おたふく風邪にかからないように予防することが大切です。

おたふく風邪の予防にはワクチン接種しか方法がありません。しかし、おたふく風邪の予防接種は費用が公費負担の定期接種ではなく、希望者のみが自分でワクチン代を負担して打つ任意接種のため、ワクチン接種率は半分以下となっています。

また、残念ながら未だに、ワクチンを打つより自然に感染したほうが早いというような考えを持っている保護者の方も沢山いらっしゃいます。おたふく風邪に感染した場合、ムンプス難聴の他、髄膜炎や精巣炎、卵巣炎などになる場合もありますので、ワクチン接種で予防することがいかに大事であるか分かるかと思います。

また、おたふく風邪のワクチンを接種する場合には、1度目にワクチン接種をした2~6年後にもう1度接種する2回接種がよいでしょう。おたふく風邪のワクチンは1歳から接種可能となっていますが、他のワクチンの接種時期もありますので、かかりつけの小児科でワクチンスケジュールを立ててもらうと安心です。

おたふく風邪によって引き起こされる「ムンプス難聴」とは?

まとめ

おたふく風邪は、はしか、水疱瘡、麻疹と並んで、子供の頃にかかる病気というイメージが強いものです。まだワクチンがない時代には、自然にかかることによって免疫をつけるしか方法がありませんでしたが、ワクチンが開発された現在では、治療法がないムンプス難聴や髄膜炎などの合併症の怖さを考えれば、自然にかかることを待つより、ワクチンを接種して予防したほうがメリットは高いといえます。

また、おたふく風邪のワクチンを2回接種している国ではおたふく風邪の発生率が激減し、ムンプス難聴も殆ど見られないという結果が報告されています。おたふく風邪のワクチン接種率を上げることが出来れば、おたふく風邪の罹患率も下げることができ、結果ムンプス難聴の発症も抑えることができる訳です。

水疱瘡のワクチンが任意接種から定期接種に変更されたように、おたふく風邪のワクチンも定期接種に変更しようという動きがあります。いつか定期接種になるかもしれないのであれば、それまでワクチンを打たずに待とうと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、おたふく風邪に感染する患者さんの多くは2歳から中学生くらいまでです。定期接種に変わるのを待っている間に感染して合併症を起こしてしまっては後悔してもしきれませんよ。お子さんがまだおたふく風邪のワクチンを接種していない場合には、この機会に是非ワクチン接種を検討してみてください。