見た感じ異常はないのに顔に痒みを感じるという経験は誰しもしたことがあると思います。
もしかするとその原因は、カビかもしれないのです。
「顔にカビ?!」と思われるかもしれませんが、実は顔カビは誰の顔にも存在している、ごくありふれたものなんです。
でも、時に怖い病気を引き起こすこともある顔カビの正体や原因、顔カビの改善方法をご紹介します。
今増えている顔カビとは
顔カビの正体は、マラセチア菌という真菌(カビ)の一種です。
マラセチア菌はアクネ菌などと同じ常在菌で、常に顔や肌に住み着いています。
皮脂や湿気の多い場所を好み、普段は毛穴の皮脂腺から出る皮脂を栄養源にしながら、皮膚を乾燥や刺激から守るはたらきをしてくれているんです。
ですが、何らかの原因でひとたび異常繁殖すると、痒みやニキビのような炎症を引き起こし、それが頭皮で起きた場合はフケや薄毛の原因にもなるとされています。
顔カビの原因と症状
ではなぜ誰の顔にも住み着いているマラセチア菌が、異常繁殖する人としない人がいるのでしょうか?
ポイントは、皮脂の過剰分泌です。
マラセチア菌は汗や皮脂が大好物。皮脂が過剰に分泌されていると、それを餌に爆発的に増殖してしまうんです。
そのため、どうしても汗や脂でべたついてしまうじっとりとした夏は、マラセチア菌にとって絶好の繁殖シーズンということになります。
マラセチア菌が異常繁殖することで、様々な症状が引き起こされ、顔が痒くなってしまうんですよ。
顔カビが引き起こす症状の代表的なものとしては、「脂漏性湿疹」「マラセチア毛包炎」「アレルギー性湿疹」「顔水虫」の4つが挙げられます。
脂漏性湿疹
皮脂が多い部分はもちろん、ストレスや生活習慣の乱れ、すすぎ不足や洗い過ぎといった不適当な洗顔によって引き起こされることがあります。男性に多く見られますが、女性にとっても決して珍しいものではありません。
鼻の脇、眉毛、毛の生え際、こめかみや耳の裏側といった部分に現れやすく、顔に赤いブツブツができたり、脂っぽい皮がこびりついたり、皮膚が剥けたような状態になります。
痒みはあまりありませんが自然治癒は難しく、適切な治療を行わないと再発を繰り返す特徴があります。
マラセチア毛包炎
顔の毛包(毛穴の奥で毛根を包んでいる部分)で顔カビが繁殖することで引き起こされる炎症です。
症状としては、ニキビより小さい赤いブツブツが毛穴に現れ、軽い痒みを伴います。悪化すると痒みが強くなり、時には痛みすら感じるほどの強烈な痒みになることも。
ニキビと見分けがつきにくい疾患ですが、ニキビとは違い抗真菌剤を使わないと治癒することはありません。
アレルギー性湿疹
元々アトピー性皮膚炎を患っている方の場合、肌の免疫機能やバリア機能が低下しているため、顔カビにより症状が悪化してアレルギー性湿疹となっている可能性があります。
痒みが悪化したり、皮膚に赤い炎症が現れたり、湿疹が増えるといった症状があればアレルギー性湿疹が疑われます。
治療してマラセチア菌がいなくなれば、症状は軽快します。
顔水虫
なんと、顔カビによって顔にも水虫ができてしまうことがあります。
顔水虫は顔にできた傷口から繁殖します。
顔に痒みがあるとつい掻いてしまいますが、それにより顔に傷がついて水虫が繁殖してしまうことがあります。また、ペットから感染する場合もあり、ペットを飼育している方は注意が必要です。
顔水虫になると、顔に白い粉が吹いたり直径1~2cm程度の虫さされのような発疹が出て激しい痒みを伴い、悪化すると顔だけでなく体にまで広がってしまう恐れがあります。
顔カビによる症状は、ニキビやほかの皮膚炎と症状の出始めが似ているため、勘違いして間違った薬を使い続けてしまう方がとても多いんです。自己判断はせず、悪化させる前に早めに皮膚科を受診することをお勧めします。
顔カビを改善するには
顔カビによる様々な症状は、軽いうちなら顔カビが繁殖しにくい環境を作ることで症状を改善できることもありますが、悪化すると皮膚科での治療を受けることになります。
しかし、薬で治癒しても顔カビが繁殖しやすい環境が変わらなければ、何度でも繰り返してしまう恐れがあります。
顔カビが繁殖しにくい環境を作るために気をつけるべきポイントは、次の5つです。
顔に触れるものは清潔にしておく
フェイスタオルやバスタオル、枕カバーなどの顔に触れるものは、常に清潔にしておきましょう。
タオル類は毎日取り替え、枕カバーもこまめに取り替えるようにすると効果的です。
スキンケアはほどほどに
肌のお手入れのしすぎは、かえって顔カビを繁殖させてしまう恐れがあります。
過度な保湿は顔カビの好む湿気の多い環境を作ってしまうことになりますし、清潔にしようとするあまり殺菌しすぎると、肌を守るためにはたらいてくれている顔カビやほかの常在菌までなくしてしまうことになります。
また、洗顔やの際にゴシゴシと肌を擦って肌に必要な皮脂まで根こそぎ落としてしまうのも問題です。泡を転がすようにして汚れだけを洗顔料に吸着させるようにしましょう。
ファンデーションのパフも清潔を保とう
ファンデーションのパフも顔に触れるものですので、清潔を保たなければいけません。
ファンデーションを使い切るまで同じものを使っている人も多いと思いますが、ファンデーションを使用する度に肌の皮脂や顔カビが付いてしまい、パフの上で顔カビが繁殖してしまいます。
そんなパフを使ってファンデーションを肌に塗るなんて、恐ろしいことですよね。
こまめに洗って清潔を保つか、消耗品と割り切って1~2週間ごとに新しいものと交換するようにしましょう。
また、パフだけでなく化粧品の容器についたホコリや汚れからも顔カビが増殖してしまうので、汚れたら拭き取るなどして容器も清潔に保ちましょう。
フィルターはこまめに掃除してきれいな空気を保とう
フィルターをこまめに掃除されていないエアコンや掃除機を使用すると、その度に部屋中にカビ菌が撒き散らかされてしまいます。
こまめにフィルター掃除をして、カビ菌のいない空気のきれいな部屋にしておきましょう。
しっかりと睡眠をとる
睡眠不足が続いてお肌の調子が悪くなったという経験をしたことのある方もいらっしゃるかと思います。
睡眠が不足していると、代謝が落ちたり肌のバランスが崩れたりして、皮膚炎を発症してしまうことも多いんです。
お肌のためにも、毎日しっかりと質の良い睡眠をとるようにしましょう。睡眠不足と同様に、ストレスの貯め過ぎもお肌にとってはマイナスなので、自分なりのストレス解消法を見つけておくのも良いですね。
通常は悪さをせず肌を乾燥や刺激から守ってくれている顔カビ(マラセチア菌)ですが、ひとたび異常繁殖すると様々な皮膚疾患を引き起こしてしまいます。
顔に触れるものは清潔に保ち、過剰なスキンケアはしないように注意して、ほどよい距離で顔カビとお付き合いするように心掛けましょう。