毎日だるい、ひどい眠気を感じる、休んでも疲れが取れない……そんな状態が続いているのは、もしかすると肝臓が疲れているのかもしれません。
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれるように、神経が通っていないので、異常があっても痛みなどの自覚症状を出すことがあまりありません。そのため、気付かないうちに肝臓機能が弱り、疲労を引き起こすことがあります。
そのまま放置していると手遅れになってしまうことも……。
今回は、肝臓の役割や疲労との関係、食の面から肝臓の機能を回復する方法をご紹介します。
そもそも肝臓はどんな臓器なの?
肝臓は、ほぼ右の肋骨の下に収まっているヒトの体の中で最も大きい臓器です。その大きさは、大人の場合体重の約50分の1(1~1.5kg)にもなります。
肝臓のはたらきといえば、アルコールの分解が連想されますが、実は肝臓は500以上のはたらきを持っており、その幅広いはたらきから「体内の化学工場」とも呼ばれているんですよ。
再生能力が非常に高いため、その70~80%を切り取っても半年後には大きさや機能が回復しますが、それは肝機能が正常に働いていることが大前提で、そのはたらきの多様さから現在でも肝機能を完全に人工装置で補うことは難しいのです。
そんな肝臓のはたらきの中でも代表的なものが、「代謝」「エネルギーの貯蓄」「解毒」「胆汁の生成・分泌」です。
代謝とエネルギーの貯蓄
代謝は肝臓のはたらきのなかでも、最も重要なものです。
私たちが食べたものは、胃や腸といった消化器官で消化・吸収されたあと、肝臓へ送られます。
消化器官から送られてきた栄養素を体内で使える形に分解・合成などの加工を行って貯蔵し、必要なときに必要な場所へと動脈を通して供給しています。
肝臓は代謝の中枢を担うといわれており、肝臓から供給される栄養素で脳、肉や骨、血液などの体を構成する組織は支えられているんです。
解毒
肝臓がアルコールを分解することはよく知られていますが、ほかにも体内でたんぱく質を作り出すときにできてしまう毒性のアンモニアや有害物質、薬や老廃物などを解毒し、無害化して、体外に排出するはたらきも持っています。
たとえばアルコールの場合、腸から吸収されて肝臓に送られ、肝臓でアセトアルデヒドに分解されたあと、酢酸と水に加工されて体外に排出されます。
飲み過ぎなどで肝臓のはたらきが追いつかなくなるとアセトアルデヒドが蓄積して二日酔いになってしまうんです。
胆汁の生成・分泌
肝臓では1日に700~1,000ccの胆汁という黄緑色の液体が生成されますが、その胆汁にはいくつかの役割があります。
一つは、脂質の消化吸収を助ける消化液としての役割です。
胆汁自身には消化酵素は含まれておらず、胆汁に含まれる胆汁酸という酸が脂肪を乳化して消化酵素にはたらきかけることで消化吸収を助けています。
胆汁が十分に分泌されないと消化吸収できる量が減り、体内に十分な栄養素を取り込むことができなくなってしまったり、消化不良で便が硬くなって便秘を引き起こすこともあります。
もう一つは、コレステロールや肝臓で処理された不要物の排出です。
胆汁は、胆汁酸やコレステロール、古くなった赤血球を破壊して切り離した物質から作り出したビリルビン(胆汁色素)によって構成されています。
胆汁の原料とすることで、血中のコレステロールを分解し、体外に排出しているんです。
肝臓が疲れるとどうなるの?
肝臓が疲れて機能が低下しても、肝臓そのものには痛みなどの自覚症状は現れませんが、体の様々な部分に症状が現れます。
典型的な症状が、黄疸です。
胆汁を作る際に古くなった赤血球が使用されていることはすでに解説しましたが、肝臓が疲れるとこの機能が上手くはたらかず、ビリルビンが胆汁でなく、血液中に漏れてしまい、黄疸となって現れます。
黄色人種の場合、肌の色では見分けがつきにくいのですが、白目の部分が黄色くなったり、尿の色が濃い黄色になる、便の色が薄く(白く)なるといった症状で判別することができます。
ほかの特徴的な症状としては、
・体がだるい
・脱力感がある
・微熱
・過度の眠気
・不眠
・イライラする
・右の肩や首筋が凝る
といった疲労症状
・食欲不振
・吐き気
・膨満感
・体重減少
・急にお酒に弱くなる
といった、食欲や食に関連する症状
ほかにも、
・身体のかゆみ
・爪が白くなったり、縦に筋が出る
・出血しやすくなる
・あざができやすくなる
・胸や首筋、肩、腕などに赤いクモ状の班点
・手のひらが赤い
・乳首にしこり
・肌荒れ、シミが増える
・足のむくみ、だるさ
・息切れ
など、実に様々なものがあります。
放置していると、脂肪肝や肝硬変、肝がんへと進展する恐れがあり、黄疸などの症状が出た頃にはかなり病状が進行していることもあります。
定期的に健康診断などの血液検査で異常がないか確認したり、日頃から肝臓の機能を高める栄養素を取り入れるなどして肝臓の健康に気を配っておくことが大切です。
肝臓に良い栄養素はどれ?
肝臓の機能を高めるために必要な栄養素は、次のようなものです。
ビタミン
肝臓が正常に代謝やエネルギーの供給を行うために、ビタミンは欠かせない栄養素です。
特に、「抗酸化ビタミン」と呼ばれるビタミンA、C、Eは、多くの酵素を使用する肝臓で発生し、老化の原因にもなる活性酸素に対抗する力があります。
また、ビタミンB郡(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸)には肝臓の機能を活発にし、代謝をスムーズにするはたらきがあります。
たんぱく質
肝臓は代謝や解毒、肝細胞の修復などを行うために、たんぱく質が使用します。
ダイエットなどで極端にたんぱく質の摂取を制限していた場合、たんぱく質が不足して肝臓が脂肪を排出するはたらきを抑えられて逆に脂肪が溜まってしまったり、肝細胞の修復が行えなくなってしまいます。
食物繊維
整腸作用のある食物繊維をしっかり摂って便秘を解消・予防することは、肝臓にとっても非常にプラスになります。
便秘になると腸内で有害物質が発生し、それを解毒するために肝臓がより多くはたらく必要が出てきます。便秘を解消することで肝臓の負担を減らしましょう。
まだまだある、肝臓に良い栄養素
ビタミン・たんぱく質・食物繊維以外にも、肝臓が代謝や解毒、機能修復を行う上で必要な栄養素はたくさんあります。その中の一部が、以下のようなものです。
・亜鉛
・アラニン
・オルニチン
・タウリン
・スルフォラファン
・セサミン
・オメガ3脂肪酸
肝臓に良い食べ物はこれ!
肝臓に良い栄養素が豊富に含まれている食品としては、以下のようなものが挙げられます。
・黒豆、枝豆、豆腐、納豆、味噌などの大豆製品
・昆布、かつお節、しじみ、牡蠣などの海産物
・鶏肉、レバーなどの畜産品
・かぼちゃ、きゃべつ、もやしなどの野菜
・にんにく、ウコンなどの香味野菜や梅干し
・玄米、ごまなど
それぞれ、肝臓のはたらきを強化したり、再生を助けたり、毒素を無毒化・排出することで肝臓の負担を減らす作用のある栄養素が豊富に含まれています。
よく見てみると、ウコンやしじみの味噌汁など二日酔いの予防や改善のために有名なものや、枝豆や豆腐、きゃべつなど居酒屋のおつまみとして定番のものが多いですよね。
これなら、「肝臓は守りたいけどお酒も飲みたい」という人でも、肝臓を労りながらお酒が飲めると思いませんか?
肝臓は健康な生活のためにはなくてはならない臓器です。
肝臓のはたらきが正常であれば、たとえ70%を失ってもその再生力で元通りになるので、肝臓に良い栄養素が豊富な食品を積極的に摂って、肝機能を高めていきましょう。