早期発見のために知っておきたい「甲状腺機能低下症」のこと

女性に多い「甲状腺機能低下症」という病気をご存知でしょうか。症状が軽いものまで含めると、40歳以上の100人に5人の割合でみられる病気です。甲状腺ホルモンは代謝に関係しているホルモンで、このホルモンの分泌が低下してしまう甲状腺機能低下症にかかると全身の倦怠感や昼夜問わずの眠気といったさまざま症状が起こります。そこで今回はあまり聞きなれませんが意外と身近な甲状腺機能低下症についてご紹介していきます。

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甲状腺機能低下症とは?

甲状腺とはのどぼとけの下、気管の前にある蝶々のような形をした器官です。甲状腺は血液中にホルモンを分泌させ全身の代謝を正常に保つ役割をしている大切な器官です。

甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるのが「甲状腺機能亢進症」、逆に甲状腺ホルモンが不足してしまうのが「甲状腺機能低下症」です。

甲状腺ホルモンの分泌が不足する甲状腺機能低下症は、ホルモン不足によって代謝が低下するので、動脈硬化や狭心症、心筋梗塞の原因にもなってしまいます。早めに適切な治療を行うことが大切です。

早期発見のために知っておきたい「甲状腺機能低下症」のこと

甲状腺機能低下症は2つに分けられる

甲状腺機能亢進症は「原発性甲状腺機能低下症」と「持続性甲状腺機能低下症」とに分けられます。

原発性甲状腺機能低下症とは

原発性甲状腺機能低下症はさらに先天性のものと後天性のものに分けられます。

先天性の甲状腺機能低下症は「クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)」といいます。症状は生まれつき甲状腺がうまく機能せずに甲状腺ホルモンの分泌が悪い病気で3,000~5,000人に1人の割合で発症します。

クレチン症の原因としては、生まれつき甲状腺自体の存在がない、形成不全、ホルモンの合成ができないなどさまざまなのですが、これらがどうして起こるのかは今のところ不明です。

クレチン症では成長に必要な甲状腺ホルモンが不足するので、知能や体が正常に発育しません。けれども、生後3か月までにクレチン症の治療を開始することができれば、正常に発育できる可能性が高くなります。クレチン症は内服薬の服用にて治療を行うため、小さな赤ちゃんの負担にもなりにくいです。

後天性の甲状腺機能低下症のほとんどが「原発性甲状腺機能低下症」と呼ばれるもので、その中でもっとも多いのが「慢性甲状腺炎(橋本病)」です。

慢性甲状腺炎とは体の免疫システムの機能がバランスを崩し、自分の体に向けて攻撃するという「自己免疫疾患」です。

持続性甲状腺機能低下症とは

「持続性甲状腺機能低下症」は甲状腺ホルモンの量を調節する視床下部や下垂体に何らかの異常が起こり、甲状腺ホルモンが不足してしまうものです。

持続性甲状腺機能低下症で代表的なものは「シーハン症候群」です。これは出産時に大量出血した場合に下垂体への血流が悪くなって、組織の一部が壊死し、下垂体の機能が悪くなり甲状腺ホルモンの分泌が不足します。

他にも下垂体に腫瘍ができる「下垂体腫瘍」や頭にできる良性の腫瘍が大きくなりすぎ、視床下部や下垂体を圧迫することが原因の「頭蓋咽頭腫」があります。

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甲状腺機能低下症の症状

甲状腺機能低下症の症状は実にさまざまで、他の病気でもあらわれる症状なので受診しても見逃されることも多いです。甲状腺機能低下症であらわれる症状には次のようなものがあります。

・むくみ
・倦怠感
・眠気
・乾燥
・汗をかかなくなる
・体重増加
・頭の回転が鈍くなる
・月経異常
・脈拍がゆっくりになる
・寒がりになる
・脱毛
・声が低くなりしわがれる
・便秘

これらの症状は、心臓病や腎臓病、肝臓病でも起こりますし、老化現象としてもあらわれる症状です。血液検査で甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンを調べることで甲状腺機能低下症かどうかわかります。

早期発見のために知っておきたい「甲状腺機能低下症」のこと

甲状腺機能低下症の治療方法

血液検査で甲状腺機能低下症だと診断されればすぐに治療を開始します。

治療方法は甲状腺ホルモンを投与を内服薬で行うのが一般的です。内服薬の投与量は定期的に血液検査でホルモン値を確認しながら調整を行いますが、基本的に長期間服用することになり、一生飲み続けることも珍しくありません。

長期間、治療を続けることでホルモン値が正常になり、内服薬の服用が必要なくなるケースもあります。自分で勝手に判断せず、医師の指示に従いましょう。

早期発見のために知っておきたい「甲状腺機能低下症」のこと

日常生活の注意点

甲状腺機能低下症はきちんと内服薬を服用することで症状を緩和することができます。症状がおさまってくると普通の健康体と変わらないのですが、内服薬の効果を下げないため、そして悪化させないために日常生活にちょっとした注意が必要になります。

甲状腺機能低下症はヨードを摂りすぎることで悪化してしまうので、ヨードを含むわかめなどの海藻類の食べ過ぎや、ヨードを含むうがい薬でのうがいは控えるようにしましょう。

また甲状腺機能低下症でも妊娠出産ももちろん可能です。

一般的には妊娠中に薬の服用は避けたいところではありますが、甲状腺機能低下症で内服する内服薬は妊娠中もホルモン値を維持するために服用を続けながら出産までいたります。

ホルモン値のコントロールができていないと、早産や流産の原因にもなります。赤ちゃんの成長にお母さんの甲状腺ホルモンは必要不可欠なのです。