近年では高齢出産が増えています。今や全分娩の5人に1人といわれています。
女性が社会で活躍する傍ら、晩婚化が進み、高齢出産の方も多くなってきました。若いうちから出産して、家事育児に追われて、仕事や遊びのチャンスの逃したくない!そう思っていたら気付いたら30代半ばになってしまった!
高齢出産は若くして出産するよりもリスクが上がります。ですが、反面いいこともあります。高齢出産のお話をしたいと思います。
高齢出産になる年齢
統計上や医学上では35歳以上の女性の出産を、高齢出産と呼んでいます。日本産科婦人科学会の定義では、35歳以上の初産婦が高齢出産とされています。
1993年以上前は30代以上の初産婦とされていたが、その後30歳以上の初産婦が増えて、1991年頃から35歳が高齢出産と引き上げられました。二人目以降の出産が35歳以上なら、高齢出産の対象と見なされないこともあります。
妊娠出産年齢が上がっていくほど、危険度も増していきます。
高齢出産は時代と共にどう変わってきたか
女性の社会進出や晩婚化が進み、女性の出産年齢も上がってきています。40代前後で出産された方も、今では結構身近に見られるようになりました。
厚労省の出産統計です。
全出産のうち
【30~35歳で出産の割合】
・1950年では36.9%
・1995年では40.8%
・2013年では62.4%
【35~40歳で出産の割合】
・1950年では15.6%
・1995年では9.5%
・2013年では26.9%
【40~45歳で出産の割合】
・1950年では3.7%
・1995年では9.5%
・2013年では4.6%
昔は多産だったこともあるので、全出産に対する高齢での出産の人数を見てみると、今と比べて少なくはないのですが、割合が少ないようです。
高齢出産のメリット・デメリット
1.高齢出産のメリット
(1)経済的余裕が出来やすい
若いうちは給料も少なかったり、学生であれば、給料もまだ得られないので子育てが厳しい状況です。ある程度仕事でキャリアを積んで、経済的にも余裕が出来てくると、育児や生活にもお金をかけることが出来やすくなります。
(2)人生経験が豊富
何年と社会で活躍し知識も経験も豊富になってくると、それが育児に役立ちます。また、そこから精神的なゆとりも生まれてきます。
(3)精神的なゆとりがある
妊娠出産育児はお母さんにとっては大変負担が大きいです。
子育てに自信を失くしたり、自分に余裕がなくなってしまったり、周りの友人は遊んだり好きな事や仕事に打ち込んでいるのに自分はこもって育児をしているイラ立ち、どうしていいのか分からないなど。
ある程度いろんな経験をしているからこそ余裕が生まれます。
(4)子宮体ガンのリスクが少ない
アメリカの予防医学研究チームが行った調査の結果・・・
25歳以前で出産した人と30~40歳で出産した人とでは約17%子宮ガンのリスクが少なく、35~39歳で出産した人は約32%、40歳~は44%と少ないです。
また、アメリカの長寿研究者達は100歳まで生きている人を調べた結果、40歳以上で出産をしている人も多かったとのことです。
2.高齢出産のデメリット
(1)妊娠の可能性が低下する
全妊娠の自然流産率は10~15%といわれています。これが35歳以上になると約20%、40歳代では40~60%にも上がります。
流産や早産、切迫流産や切迫早産の確率も上がります。
(2)先天性異常を発症する割合が高くなる
35歳以上になると、先天性異常を発症する割合が高くなります。先天性異常とは、出生前の段階で生じる身体的な異常のことです。なぜこの先天性異常が出やすくなるかというと、卵子の老化によって異常を起こすリスクが高くなります。
卵子は精子と違って、生まれた時にすでに作られていて、新たに作られることはないのです。よって、年齢を重ねる程卵子も老化してしまいます。
先天性異常の起こる確率は・・・
・無脳症になる確率は1/10000
・重い障害になる確率は1/1500
・軽い障害となる確率は1/25
染色体異常のダウン症児が生まれる確率・・・
・30歳では1/952
・35歳では1/400
・40歳では1/106
・45歳では1/30
染色体異常のある場合、正常な細胞分裂が出来ません。それがダウン症です。細胞分裂が出来ず、途中で止まってしまうと流産や不妊にもなってしまいます。
(3)妊娠高血圧症候群のリスクも
妊娠高血圧症候群とは、日本産科婦人科学会での定義では「妊娠20週以降に分娩後12週まで高血圧になっている場合、または、高血圧に蛋白尿を伴う場合の何れかで、そしてこれらの症状が、単なる妊娠の偶発合併症によるものでないもの」とされています。
つまり、高血圧・たんぱく尿・浮腫の3つの症状が出て診断されます。
妊娠高血圧症候群は合併症にかかりやすかったり、それが重症化したりすることもあるので、妊娠期間中は注意が必要になってきます。
発生頻度は妊婦の約10%といわれ、35歳以上では14~18%、45歳以上では30%とリスクが上がります。
(4)常位胎盤早期剥離の心配
常位胎盤早期剥離とは赤ちゃんとお母さんを繋いでいる胎盤が剥がれてしまう症状です。全妊婦の約1%と発症率は少ないですが、大変注意が必要です。
妊娠高血圧症候群、子宮筋腫、事故などの強い衝撃で起こることがあります。
妊娠高血圧症候群は高齢出産で発症することが多くなるので、常位胎盤早期剥離の発生率も高くなります。この常位胎盤早期剥離が診断されたら、帝王切開での出産が主となります。
最悪な場合は命にも係わります。20代に比べ、40代の産婦の死亡率は20倍にも上がります。
(5)高齢初産は難産になりやすい
初産でも高齢になっていく程、「軟産道強靭(なんざんどうきょうじん)」という産道や子宮口の柔軟性に欠け、難産になることがあります。母子の状態によりけりですが、帝王切開に切り替えることが多くなってきます。
(6)体力的に厳しくなる
若い頃は体力があって少々の事ではそんなに疲れなかった人でも、やはり年齢を重ねると体力的に厳しくなる事ってありますよね。
お腹に赤ちゃんがいることで臨月の頃では・・・
・胎児の重さで約3kg
・胎盤の重さ約0.5kg
・羊水の重さ約0.5kg
・その他血液、子宮、乳房などが約4kg程増加
最低でも8kgは体重が増えます。
身体も当然重いですし、疲れやすさも増しやすくなります。妊娠中も大変ですが、産む際も分娩に時間がかかれば体力的にも厳しいです。そして産んでからも、子供の動きややることの多さに体力的についていくのがやっとのこともあります。
(7)身体の回復に時間がかかる
産後の傷の回復や疲れの回復も、年齢を重ねるほど回復が遅くなります。
経産婦と初産婦のリスクの違い
1.高齢初産の方が経産婦より子宮口や産道が伸びにくい
初産での高齢出産と2人目以上の高齢出産を比べると、後者は一度産んでいるので子宮口や産道も伸びやすく、初産よりは負担が少ないです。
1人目の妊娠から1~2年程度であれば子宮口や産道は伸びやすいのですが、3~4年以上になると柔軟性がなくなってきます。なので、同じ35歳以上の妊娠だとしても、2人目以上は高齢出産と見なされないこともあります。
2.染色体異常のリスクは同じ
高齢初産であろうとなかろうと、高齢出産である限り染色体異常のリスクは同じです。卵子の老化によるものなので、出産の回数ではありません。
高齢出産の場合、気を付けること
1.大きな病院で経過を見つつ、出産がお勧め
高齢出産でも何の問題もないこともあります。ただ、20代で妊娠出産より40代の方がリスクが高いことをお話をしました。
妊娠経過が順調なら、個人経営の産院でも大丈夫ですが、妊娠経過が思わしくなかったり不安があるようなら、大きな病院で健診や出産を考えましょう。総合病院などの大きな病院では、他科と連携がとれるので何かあった時には安心です。
リスクがある場合は、大概は大きな病院へかかるよう紹介状を書いてくれます。
2.自己管理を徹底する
病院から食事管理するよう言われることもあります。喫煙、飲酒ももちろんダメです。
妊娠高血圧症候群の症状には気を付けます。むくみ、タンパク尿、体重増加、高血圧には十分注意します。特に妊娠後期に発症しやすくなります。
普段と違って、妊娠中は食べるものに特に慎重になる必要があります。普段食べても大丈夫な程度のものでも、妊娠中は数値にすぐ反映してきます。
塩分制限、脂っこいものや糖分を控えたり、食べ過ぎにも気を付けなければなりません。特に、元から高血圧や糖尿病などの持病がある場合は注意しなければなりません。
高齢出産のメリットやデメリットについてお話しさせていただきました。
身体の問題も大きいですが、高齢出産で大変なのは妊娠出産だけでなく、その後の育児も大変です。高齢出産となると、自身が年齢が高くなれば親も(お子様からして祖父母)年齢が高くなります。親も若ければ孫の面倒もさほど苦ではないかもしれません。年齢がいくほど孫の面倒もしんどくなります。
タイミングによっては、中には親の介護と子供の育児が重なって大変なんてこともあります。子供が大きくなったら、学費が捻出できるまで働けるかも重要です。焦るのもよくありませんが、こういった現実も踏まえながら高齢出産について知っておきましょう。