気が付きにくい妊娠初期の流産の原因と予防する方法

妊娠を望んでいる人にとって、流産はとてもツライ出来事です。実際には妊娠初期の流産は案外経験されている方も多いのです。妊娠したことに気付かず流産していることもしばしばあります。

流産の種類や原因、少しでも流産のリスクを少なくする方法をご紹介します。

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流産とは

流産とは、妊娠初期から妊娠22週未満の間で妊娠が継続出来なくなることです。受精卵が子宮内膜に着床したものの、胎児として育たず胎内から流れてしまう症状です。多くは胎盤が完成する妊娠12週までに起こります。流産は全体の10~15%の確率で起こります。流産全体の9割は妊娠初期の流産です。

全妊婦さんの約1割に見られる流産では、妊娠1ヶ月(妊娠0~3週)で約1割、妊娠2ヶ月(妊娠4~7週)で約5割、妊娠3ヶ月(妊娠8~11週)で約3割の割合です。妊娠12週未満で流産になってしまうことを早期流産(別名初期流産)、妊娠12週以降で流産してしまうことを後期流産とされています。また、妊娠22週以降は死産とされます。3回以上流産を繰り返すことを習慣流産といわれ、母体側に原因があることもあるので、検査をする必要があります。

流産の種類

1.稽留流産(繋留流産)

(1)稽留流産とは

胎児が子宮の中で死亡してしまい、心拍の確認がとれず、超音波検査で胎児が見えず、子宮内で留まってしまっている状態の流産のことです。

(2)症状

出血や下腹部痛などなく、自覚症状はほとんどありません。

(3)稽留流産になった場合

子宮内の胎児や組織を排出させる手術(子宮内容除去術)、もしくは病院によっては自然に出てくるまで待つこともあります。

2.化学流産

(1)化学流産とは

受精し、妊娠検査薬で陽性反応が出たけれど着床できなかった状態です。普通に生理が来たと思ってこの化学流産に気づかないケースが多く、医学的にも流産のうちに分類されません。

(2)症状

特に自覚症状はありません。いつも規則的に生理が来ていた人が、生理が遅れてから来た時に不審に思ったら化学流産だったということもあります。

(3)化学流産になった場合

治療は特に行いません。

3.切迫流産

(1)切迫流産とは

妊娠22週未満で流産になりかけている危険な状態です。軽い切迫流産も含めると、2~3割の方が経験します。

(2)症状

出血、お腹の張り、下腹部痛などです。

(3)切迫流産となった場合

流産になりかけている状態なので、必ずしも流産になってしまうとも限りません。安静にして極力動かないようにして過ごします。医師の指示に従い、場合によっては入院になることもあります。出血や張りが止まらない場合は薬を出されることもあります。

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4.進行流産

(1)進行流産とは

子宮口が開いてしまい、流産が進行している状態です。わずかな時間の間に、赤ちゃんが外に出てきてしまいます。ここまでくると、進行流産は止めることが出来ません。進行流産にはこの後説明しますが、完全流産と不全流産とあります。

(2)症状

規則的な強い下腹部痛、大量の出血、子宮頸部の開大です。上記の症状が出た時には赤ちゃんが留まることは不可能になります。数分のうちに赤ちゃん出てくることがあります。

(3)進行流産になった場合

胎児や組織が完全に出てしまっている様なら経過観察で様子を見ます。もし、子宮内部に胎児や組織が残っているようなら、排出する手術(子宮内容除去術)をします。

5.完全流産

(1)完全流産とは

進行流産が進んで、胎児や組織が子宮内から外に完全に排出されてしまう状態です。

(2)症状

進行流産の状態から、血の塊の様なものが子宮から出てきます。

(3)完全流産の場合

全て子宮内から外に出てしまっているなら、特に手術はせず経過観察をします。

6.不全流産

(1)不全流産とは

進行流産が進んで、胎児や組織が子宮内から外に出るが、一部が子宮内に残ってしまっている状態です。

(2)症状

進行流産の状態から、血の塊の様なものが子宮から出てきます。全てが排出されず、一部は子宮内に留まったままになります。

(3)不全流産の場合

まだ、子宮内に一部が残っているので、それを排出させる必要があります。排出させないと感染症を起こすことがあるので、子宮内容除去術を行って排出させます。残存物が少ない時は、子宮収縮剤や抗生物質を投与して経過を見ます。

流産の原因と症状

1.早期流産の原因の多くは染色体異常

妊娠12週までの多くの流産のうち、受精卵の異常によるものです。これは防ぎようもないです。母体に問題があるわけではありません。

2.黄体機能不全

黄体ホルモンという、排卵後に卵巣から分泌されるホルモンが十分に分泌されないことで、胎盤の形成が上手くいかず、胎児が育たなくなります。

3.子宮形態異常

子宮形態異常によって、受精卵が着床しにくかったり、不妊の原因にもなります。超音波検査、腹腔鏡、子宮卵管造影検査、子宮鏡検査、MRIなどの検査で分かることがあります。種類は中隔子宮、弓状子宮、双頚双角子宮、単頚双角子宮などです。

気が付きにくい妊娠初期の流産の原因と予防する方法

4.子宮筋腫

子宮筋腫とは、女性ホルモンのエストロゲンの働きによって、子宮筋層内の平滑筋から発育する良性腫瘍で、大きさは小さなものから数十cmにまで及ぶことがあります。こぶ状で1個の時もあれば、数個出来ることもあります。

位置や大きさによっては、流産しやすいことがあります。

5.子宮内膜機能不全

黄体ホルモンが分泌されて胎盤が形成されるところ、子宮内膜が黄体ホルモンに反応しないと胎盤の発育が上手くいきません。よって胎児が育ちにくくなってしまいますこれは妊娠前から改善することが出来ます。

6.子宮内腔癒着症

子宮内腔癒着症とは、人工妊娠中絶や流産などの手術の際に、子宮内膜基底部が傷ついて子宮内壁同士が癒着してしまった状態で、癒着が酷い場合は胎盤の形成が上手く出来ず、流産しやすくなります。

7.子宮頸管無力症

妊娠中期(妊娠12週~22週)の流産の約2~3割が子宮頚管無力症によるものが多いです。この子宮頚管無力症とは、お産が始まっていないのに子宮口が開き始めてしまう症状です。それによって、胎児や胎盤を支えきれず、切迫流産や切迫早産になりやすいです。

8.子宮内膜症

子宮内膜症とは、本来なら子宮内腔に子宮内膜や子宮内膜様の組織が出来るはずなのに、子宮以外の場所に出来てしまう病気です。子宮内膜症があると通常の2倍流産になる確率が上がります。

流産の予防法

絶対的に予防する方法はありませんが、妊娠しやすくする体質に改善したり、妊娠が維持出来るようにすることが大切です。

日頃どんなことを心掛けたらよいのでしょか。

1.葉酸を摂取する

超妊娠初期から一定量の葉酸が摂取されていないと、胎児に神経管閉鎖症のリスクが高くなるという結果が出ています。

厚生省では、1日0.4mgの葉酸摂取を推奨しており、妊娠を計画している場合には妊娠の1か月前から妊娠3ヶ月までの間に医師の管理の元摂取し、1日1mgを超えて摂取しないようにすることと情報提供されています。つまり妊娠前から葉酸摂取が望ましく、過剰摂取も良くないとのことです。

2.ストレスを溜めない

ストレスを受けることで、血管が収縮して血行不良になり、卵巣や免疫機能にも影響が出てきます。また、ストレスでプロラクチンというホルモンが高くなると、排卵しづらくなり、妊娠維持をする黄体ホルモンの分泌が低下してしまいます。

3.タバコや飲酒は控える

タバコは体に良くないだけでなく、血行不良となってしまいます。また、妊娠を考えているなら飲酒は控えた方が良いです。実は妊娠していたのに、気付かずお酒を飲んでしまっていては胎児にも影響が出てしまいます。

4.冷え性にならないようにする

冷え性になってしまうと、卵巣や子宮の機能が低下してしまいます。胎盤が形成されにくく、また胎盤から血液や酸素などが運ばれにくくなってしまいます。

気が付きにくい妊娠初期の流産の原因と予防する方法

注意する事

1.お腹の張り、痛み、出血に注意

もしこの症状が出たら、深夜でも病院へ行きましょう。特に痛みや出血の場合は、すぐに連絡しましょう。

2.レントゲンは避ける

放射線を使うレントゲンなどは、特に妊娠4~8週の間は避けます。

3.ハードなスポーツは避ける

妊娠経過が順調であれば、適度な運動は体重増加を防ぐので良いとされていますが、妊娠を考えている時や妊娠初期は特にハードなスポーツは控えた方が良いでしょう。

流産は決して珍しいことではないですが、いざ流産になってしまうととても悲しくショックで落ち込みます。それもストレスの1つになってしまうので、焦らずゆったりした気持ちでいられるようにしましょう。