髪の毛が部分的に抜けてハゲてしまう円形脱毛症。
その名前から、所謂「10円ハゲ」の状態が連想されますが、実は円形脱毛症には色々な症状があり、症状によっては自然治癒するものもありますが、中には長期間の専門的な治療が必要なものもあります。
一般的に「ストレスが原因」と言われることの多い円形脱毛症ですが、実は原因も様々で、老若男女誰にでも起こる可能性のある病気なんです。
今回は、そんな知っているようで知らなかった、円形脱毛症について詳しく解説します。
円形脱毛症の症状と種類
円形脱毛症には次の5つの症状があります。
1.単発型
円形脱毛症の中で一番多いのが、この単発型です。
直径2cm程度から500円硬貨大程度のハゲが1カ所以上発生するもので、多くの場合10円玉程度の大きさになったときにその存在に気付きます。「円形脱毛症」と聞いてまず連想するのがこのタイプですね。
脱毛する際に痛みなどはないため突然ハゲが現れますが、かゆみやフケといった前兆がみられる事もあります。また、頭髪以外にも眉毛やすね毛など、体中の様々な部分に現れることも少なくありません。
単発型の円形脱毛症は軽度であれば自然治癒が可能で、発症した中の8割以上の方が一年以内で完治に至っています。
しかし、単発型は円形脱毛症の初期症状でもあり、次にご紹介する「多発型」に進行することが稀にあります。
2.多発型
単発型が進行し、円形脱毛が2カ所以上で発生して何度も繰り返すタイプです。
頭のあちらこちらに円形脱毛が現れたり、複数の円形脱毛がくっついて大きくなることもあります。
一旦治癒しても再発しやすい状態になっており、特に症状が3年以上継続している場合は自然治癒することはほとんどなく、治療には2年近くかかってしまうこともあります。
ここで治癒できずさらに次のステージへと進行してしまうと、治癒率は1割を下回ります。
3.多発融合型
髪の生え際に沿って帯状に脱毛が広がる「蛇行性」と、頭髪が全体的に抜け落ちていく「びまん性」の2種があります。
「蛇行性」は日本の円形脱毛症患者の1.4%程度と非常に稀なタイプですが、それ故に治療法も確立されておらず、完治までに数年に及ぶ治療が必要になります。
「びまん性」も同じく治療が難しいタイプで進行も早く、放置していると次にご紹介する全頭型に進行してしまいます。女性に多く見られ、「女性版AGA(FAGA)」と呼ばれる事もありますが、子どもや成人男性でも発症することがあります。
4.全頭型
多発型円形脱毛症がさらに進み、全体的に脱毛が広がってほとんど全ての毛髪が抜けてしまうタイプになります。
ここまで進行してしまうと治療も長期間に渡り、それでも完治は非常に難しくなってしまいます。
ただ、近年ADTAFS (acute diffuse and total alopecia of the female scalp)という新しいタイプの脱毛症も現れています。
特に女性に多く見られ、急性びまん性脱毛症の発症から3ヶ月程度ですべての髪が抜け落ちてしまうのです。脱毛を止めることはできないものの、髪が抜け切ると今度は発毛が始まり、短期間で自然治癒してしまうというものです。
5.汎発型
髪の毛だけでなく、眉毛やまつげ、ひげ、脇毛、すね毛など、全身の毛が脱毛してしまうものです。
症状が重く、難治性で治療が長期化しやすく、予後も悪いという非常に難しいタイプで、場合によっては高度医療機関での治療や入院が必要となることもあります。
円形脱毛症の原因
実は、原因として様々なものが挙げられているものの、まだハッキリとはわかってない部分も多く、今なお研究中であるというのが現状になります。中でも現在特に有力とされているのは、次の4つです。
1.精神的ストレス
円形脱毛症の原因というと、まず精神的ストレスを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
しかし、精神的ストレスと円形脱毛症のハッキリとした関係は解明されておらず、1歳の赤ちゃんでも円形脱毛症を発症することがあるので、ストレス以外にも原因があることは明らかです。
では精神的ストレスと円形脱毛症は無関係かと言えばそうとも言い切れません。
慢性的にストレスを抱えていると自律神経のバランスが崩れ、血流が悪化することで頭皮に十分な血液が届かなくなったり、以下で紹介する「自己免疫疾患」や「内分泌異常」を引き起こすことで、 円形脱毛症に繋がることがあるからです。
2.自己免疫疾患
現在、円形脱毛症の原因の最有力と考えられているのが、「自己免疫疾患」です。
自己免疫疾患とは、本来ウイルスや細菌といった異物から体を守るために存在している免疫が、自分の体の一部を異物と認識して攻撃してしまう病気です。
免疫が毛を作る役割を持っている毛包を異物と認識して攻撃・破壊してしまうと脱毛が起こり、新しい毛も生えてこなくなってしまうのではないかとされています。
自己免疫疾患は精神的ストレスや疲労が溜まることで発症することもあるようですが、まだその原因やメカニズムは完全には解明されていません。
3.内分泌異常
内分泌異常とは、ホルモンの合成や分泌、はたらきなどに異常が起こっている状態です。
特に女性の場合、妊娠・出産・閉経といった女性ホルモンのバランスが大きく崩れるタイミングで内分泌異常が起こりやすくなっています。
出産後の女性の多くが経験する「産後抜け毛」も内分泌異常で発症する脱毛症の一つで、多くの場合半年から1年で症状が落ち着きますが、稀に産後のストレスや栄養不足などで円形脱毛症に進行してしまうこともあります。
4.遺伝的原因
まだハッキリとは解明されていませんが、円形脱毛症と遺伝的な要素の関係も指摘されています。
海外の研究でも親や祖父母が円形脱毛症であった場合、子や孫にも円形脱毛症が発症する確率が高くなることがわかっています。
円形脱毛症になりやすい人の特徴
円形脱毛症の原因には、精神的ストレス以外にも様々な原因がありましたが、具体的にどんな人が発症しやすいのでしょうか。円形脱毛症になりやすい人とは、以下のようなタイプの方です。
1.ストレスが溜まっている(または溜めやすい)人
仕事や学校、家庭など、現代人はあらゆる場所でストレスに襲われますよね。
そのストレスを上手く解消する方法を持っている人ならいいのですが、ストレス解消の方法がなく溜め込みやすい人は、円形脱毛症が引き起こされてしまう恐れがあります。
2.円形脱毛症の経験がある人が家族にいる人
家族に円形脱毛症の人がいると自分も円形脱毛症を発症するリスクが高まることがわかっています。必ずしも円形脱毛症が遺伝するというわけではありませんが、日頃から予防を心掛けておいた方が良いでしょう。
3.妊娠中・出産後または更年期の女性
ホルモンバランスの乱れる妊娠中や出産後、更年期の女性は、普段より円形脱毛症のリスクが高まっています。遺伝的リスクの高い人と同じように、日頃から予防していきましょう。
4.アトピーなどのアレルギーがある人
円形脱毛症患者の40%以上が気管支喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎といったアトピー性疾患を合併しており、親兄弟にアトピー性要因がある人も含めると実に54%にのぼるなど、アトピー性疾患と円形脱毛症の関連が指摘されています。
こういったアトピー性疾患を合併している場合、円形脱毛症の症状も重くなっていくことが多く、完治も難しくなってしまいます。
円形脱毛症の予防法
円形脱毛症は遺伝的要因もありますが、毎日の生活の中で予防をしていくことも可能です。
人は毎日50本から100本の毛が抜けるといわれています。実際自分の毛が何本くらい抜けているのか数えるのは難しいですが、その範囲の抜け毛であれば気に病むことはありません。
しかし、ちょっと多いなと感じたら、次のような予防法を実践してみましょう。
1.規則正しい生活を心掛ける
バランスの良い食事、質の高い十分な睡眠など規則正しい生活を送ることは、体の免疫力を高め血行を促進し、ストレスの解消にも繋がります。
2.健康的な頭皮環境を保つ
発毛を促進し、健康的な髪を育てるためには清潔で健康的な頭皮環境が欠かせません。頭皮の血行を促進し、毛穴に詰まった皮脂や汚れはしっかり取っておきましょう。
ただし、洗浄力が強過ぎるシャンプーを使ったり1日に2回以上の洗髪をしていると、頭皮に必要な皮脂まで取り去ってしまうため、頭皮の乾燥やフケ、かゆみ、炎症などを引き起こしてしまう恐れがあり、逆に円形脱毛症のリスクを高めてしまいます。
洗髪は1日1回とし、刺激の少ないアミノ酸系シャンプーや無添加石けんなどで洗髪して、すすぎ残しのないようにしっかりとすすぎを行ってください。
3.髪を育てる食品を取り入れる
「バランスの良い食事」が大切であることは既にご紹介しましたが、その中で健康的な髪を育てる食品を積極的に取り入れていきましょう。
髪を育てる食品というと海藻が連想されますが、それ以外にも髪の主成分である良質なたんぱく質、髪を育て、発毛を促進するために必要な鉄分や亜鉛などのミネラル類、ビタミンA、C、Eなどのビタミン類が挙げられます。
具体的には、豆腐や納豆などの大豆製品、鶏胸肉や鶏卵、乳製品、青魚やサーモン、緑黄色野菜や切り干し大根などです。
逆に、脂肪分や塩分の多い食品は血流を悪化させますし、皮脂の分泌が増えて頭皮の毛穴を詰まらせてしまいます。円形脱毛症予防だけでなく健康のためにもファストフードやコンビニ弁当に頼った生活は見直すべきでしょう。
4.頭皮マッサージで血行促進
頭皮は体の末端であるため、血行が悪くなりがちです。入浴時やテレビを見ながらなど、時間のあるときに頭皮マッサージをして血行促進する習慣をつけましょう。
5.飲酒・喫煙は控える
飲酒・喫煙は血管を収縮させ血行を悪化させます。特にタバコに含まれるニコチンには興奮作用があるため不眠にも繋がりますので、円形脱毛症の予防だけでなく健康のためにも禁煙するか、1日の本数を減らしましょう。
飲酒についても、できるだけ量を控えてください。
6.適度な運動を習慣づける
運動不足は血行不良を引き起こすだけでなく、髪を作り育てる毛母細胞のはたらきも悪くしてしまいます。
適度な運動はストレス解消にも効果がありますので、軽い運動を習慣にしていきましょう。
円形脱毛症には様々な症状があり、原因も精神的ストレス以外に遺伝や自己免疫疾患、ホルモンバランスの変化などがありました。円形脱毛症はいつ誰に起こってもおかしくない疾患ですので、規則的な生活や適度な運動、頭皮環境の改善で予防を心掛けていきましょう。
もしそれでも円形脱毛が見つかった場合は、できるだけ早く専門医に相談してください。初期で症状の軽いうちであれば、短期間で治療することが可能です。