子供の育て方に悩む親御さんが増えています。昔は、両親だけでなく、祖父母や近所の大人皆で子供を守り育てていましたが、核家族化や近所付き合いが希薄となった現在では、子育ての責任を一手に両親だけが背負っているといっても過言ではありません。
どのように育てれば子供のためになるのか、本やネットを開けば「叱りすぎるのは良くない」「子供は褒めて育てましょう」「子供を褒めすぎるのも良くありません」などなど沢山の意見で溢れています。一体どの言葉を信じれば良いのか分からず、更に混乱してしまう方もいらっしゃるでしょう。
子供を育てるのに、褒めることはとても有効なことです。しかし、褒め方を間違ってしまうと、子供に良くない影響を与えてしまうこともあるので注意が必要なのです。今日は子供の強い心を育てる正しい褒め方についてご紹介します。
「褒める育て方」で心が弱る子供がいる!
最初に言っておきますが「褒める子育て」は決して間違っている訳ではありません。子供を褒めて育てることは自己肯定感を育てることが出来ますし、自分の行った言動を褒められるということは自信にもつながります。
しかし、「褒める子育て」を「叱らず褒めてだけ育てる」と勘違いしてしまうと、子供の心を弱くしてしまうことがあります。小さい頃から些細なことでも褒められて育ち、「すごいね」「偉いね」と言われて育つと、幼いころは安定した情緒をはぐくむことが出来ますが、家庭だけでなく外の世界と触れ合う時間が長くなると、支障が出てくることがあるのです。
今まで問題なく育ってきた子供に変化がみられるのは就学後からです。それまで何をしても「偉い」「出来る」と褒められて育ち、自分は出来る子だと認識していたのに、実際に学校生活を送り他の子供と触れ合うと、自分よりも出来る子が沢山いること、自分より先生に褒めてもらえる子供が沢山いることに気付いたり、叱られた経験が乏しい子供が、初めて厳しく叱られるという経験をすると激しく自尊心が傷つけられ、不登校になることもあるのです。
子供の心を弱らせるNGな褒め方
では、どのような褒め方が子供の心を弱らせてしまうのでしょうか。
何でもかんでも褒める
「褒める子育て」と聞くと何でもかんでも褒めてしまう方がいます。我儘を言って泣いている子供に「泣いて自分の気持ちを伝えられるなんて偉いね」とまで褒めてしまうほど、何でもかんでも褒めてしまうことは子供の自己肯定感を育むどころか、自分は何をしても許される存在だという間違った認識を植え付けかねない危険な行為です。
小さい頃は何をしても褒められたのに、親以外の大人と触れ合う機会が増えると、それほど自分は褒められないということに気づき、逆に自己肯定感が低くなってしまうこともあるのです。
他人と比較して褒める
「○○ちゃんは出来ないのに△△は出来るなんて偉いね」「□□くんより上手だね」と、無意識に他のお友達と比較して褒めていることはありませんか。
他人と比較して褒められるということを多く経験した子供は他人と比較してしか自分を評価できなくなってしまいます。友達にライバル心を持つことは悪いことではありませんが、友達と比べてしか自分の価値を見出せないようでは自分の人生を歩んでいることにはなりませんし、他人と比較するばかりの人生では生き苦しさを感じてしまうでしょう。
結果だけに注目し褒める
テストで100点を採ったときや、かけっこで1等になったときなど、子供が何かに成功した時に褒めることは簡単です。もちろん、子供も自分の結果を親も喜んでくれると期待しているでしょうから期待に応えて褒めてあげることも大切です。
しかし、何かに成功したときだけ褒めていると、子供は失敗することを恐れ、自分が出来そうなことしか挑戦しなくなることがあるのです。
子供を褒めるときは結果にだけ注目するのではなく、その過程にも是非注目しましょう。例えば、自転車練習中の子供に「○○ちゃんは、転んでも毎日自転車に挑戦していてすごいね」など、自転車に乗れるようになった時に褒めることも大切ですが、乗れるようになるまでに頑張って挑戦している過程にも注目し褒めることが大切です。
子供の強い心を育てる正しい褒め方
次に、子供の強い心を育てるために褒め方についてご紹介します。
心から褒める
子供は大人が考えている以上に敏感な面があります。自分がした行動に対して心から凄いと感じて褒めてくれているのか、本当は凄いと思っていないけれど言葉だけ褒めてくれているのか察してしまいます。
大人だって、口だけで「あぁ、すごい、すごい」と言われるくらいなら、褒めてくれなくてよいと感じてしまいますよね。「褒める」ということは、心からの気持ちをあらわすからこそ効果が発揮されることを忘れないようにしましょう。
良い行動を具体的に褒める
「凄いね」「偉いね」と褒められても、子供が何を褒められたのかピンとこなければ意味がありません。子供を褒めるときには「オモチャを片付けてと言ったらすぐに片付けてくれて偉いね」など、具体的に良い行動を言葉にしながら褒めましょう。具体的に褒めることにより、子供は自分が取った行動と褒められたことが結びつきやすくなり、子供の良い行動を促すことができます。
すぐに褒める
公園から帰るとき、いつもなら帰らないと暴れて大変なのに、今日はすんなり帰ってくれた、そんなときは、すんなり帰ってくれたその時に思いっきり褒めてあげましょう。夕方の忙しい時間、これから家に帰って夕飯の支度が忙しいから寝る前に褒めてあげようでは、子供が褒められた時には何で褒められたのか理解できなくなってしまいます。子供を褒めるときは即時性が重要なのです。
悪いことをしなかったから褒めるではなく、良い行動に焦点を当てる
子供にオモチャを片付けるよう注意をし、いつもなら嫌だと我儘をいって片付けない子供が片付けたとしましょう。その場合、「今日は我儘を言わなくて偉いね」と悪いことをしなかったから褒めるのではなく、「今日はすぐにハイと言って片付けて偉いね」と良い行動に焦点を当てるようにしましょう。良い行動に焦点を当てて褒めた方が、その行動を伸ばすことができます。
子供の利益になる理由を伝えながら褒める
子供を褒めるときに、子供の利益になる理由を伝えながら褒めることは、子供の良い行動を増やすのに効果的です。例えば、「オモチャをきちんと片付けて偉いね。キチンと片付けると次に遊ぶときにすぐに見つかるものね」と片付けると良いことがあるということを子供に伝えるようにしましょう。
悪いことをしたときは叱ることも大切
子供を育てるとき、褒めることは大切ですが、それと同じくらい叱ることも大切です。叱ってばかりの育児は子供にとって良くありませんが、褒めるばかりの育児も同様に子供にとって良くない影響を与えるのです。
悪いことをしたときにきちんと叱ることによって、子供は大人が良い時も悪い時も自分をしっかり見ていてくれているという安心感を持つことが出来ますし、自分は何をしても許される特別な存在な訳ではなく、悪いことはしてはダメなのだと正しく教えることが出来ます。
また、叱られた経験が乏しい子供は、成長して学校の先生や職場の上司に叱られると、すぐに心が折れてしまうという傾向があります。子供を強い心に育てたいのであれば、日常から子供の良いところに注意し褒めてあげることと同様に、悪いことをした場合にはきちんと叱ることも大切だということを忘れないようにしましょう。