蓄膿症と呼ばれることもある副鼻腔炎。子どもから大人まで年齢にかかわらず起きる可能性があり、初期症状が鼻風邪と似ていることもあって気付かずに放置されることも多く、気がついた頃には悪化して手術が必要になってしまうこともあるんです。
副鼻腔炎にならないように、そして万が一なってしまってもすぐに気付けるよう、副鼻腔炎の原因や症状、予防方法を知っておきましょう。
副鼻腔炎とは?
「鼻腔」とは、鼻の穴の中のことで、「副鼻腔」はこの鼻腔の周りの骨の中にある空洞です。副鼻腔は、眉頭から額にかけての裏側に前頭洞(ぜんとうどう)、目と目の間に篩骨洞(しこつどう)、鼻の奥の方に蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)、頬の裏に上顎洞(じょうがくどう)と、左右一対で計8個あります。
副鼻腔はすべて鼻腔と小さな道で繋がっており、空洞全てを足すと顔全体の3分の2を占めるくらい大きいんです。ただ、副鼻腔の働きについてはまだよくわからないのが現状です。
副鼻腔炎とは、その名の通りこの「副鼻腔」が炎症を起こしている状態で、何らかの原因で炎症が起こってしまった「急性副鼻腔炎」と、急性副鼻腔炎が慢性化する「慢性副鼻腔炎(蓄膿症)」の2種類があります。
副鼻腔炎の主な原因と症状
副鼻腔炎の原因
副鼻腔炎の原因として最も多いのは、風邪などにより鼻腔に侵入した細菌やウイルスが原因で炎症が起き、それが鼻腔と繋がる副鼻腔にまで広がってしまうというものです。
鼻腔と副鼻腔が繋がっている道が炎症で腫れ上がると、副鼻腔内に入った膿や分泌物が排出できなくなって炎症が長引いたり、その状態で風邪を繰り返すなどして何度も細菌やウィルスへの感染を繰り返したりして、慢性副鼻腔炎へと進行してしまいます。
ほかの原因としては、鼻と近く道が繋がっている口や喉からの原因物質の侵入が挙げられます。例えば、放置していた虫歯、咽頭炎や扁桃炎といった喉の炎症などの菌が副鼻腔に侵入したり、アレルギー性鼻炎や喘息といったアレルギーも原因になり得ます。
また、副鼻腔炎を患っている親の子どもにも副鼻腔炎が多く見られることから、遺伝ではないかという説もあります。
副鼻腔炎の症状
慢性副鼻腔炎は、急性副鼻腔炎が3ヶ月以上続いている状態です。どちらも「副鼻腔炎」であることに変わりはないので症状も似ていますが、急性副鼻腔炎は頭痛が酷く、発熱を伴うことがあります。慢性副鼻腔炎は慢性副鼻腔炎の場合は症状があまり変化しない「安定期」と、風邪などにより症状が悪化する「急性増悪期」の2つがあるため症状の出方に波があるという違いがあります。
また、顔の様々な器官と繋がっているため、鼻だけでなく顔周りに色々な症状があらわれます。
鼻の症状
・鼻水、鼻づまり
・粘りのあるドロッとした黄色や緑色の鼻水が出る
・口や鼻が臭い
・鼻水が喉に垂れてくる
・鼻の中がポリープのように腫れる
鼻水・鼻づまりは風邪や花粉症と間違えてしまいがちですが、副鼻腔炎の場合は症状が重く長引き、鼻水も風邪などのときより粘りがあり、嫌なニオイがするという違いがあります。
鼻以外の症状
・咳が出る
・体がだるい
・頭がぼーっとする
・頭痛
・額や頬、目の奥、目の間など副鼻腔が痛む
・歯に痛みを感じる
副鼻腔は顔の色々な器官に近いため、頬の裏側にある上顎洞の痛みを歯の痛みと勘違いしてしまったり、額にある前頭洞の痛みを頭痛と勘違いしてしまったりすることが少なくありません。実際に、虫歯と思って歯科医を受診したら、「鼻が原因」と言われて耳鼻科を勧められたという事例もあるんですよ。
副鼻腔炎の予防法
副鼻腔炎は慢性化すると完治に時間がかかり、酷い場合だと手術が必要になってしまいます。何度も再発してしまうこともおおいので、何よりもまず副鼻腔炎にならないようにしっかりと予防していきましょう。
副鼻腔炎の主な原因は、風邪などによる細菌やウイルスの感染なので、基本的な予防法も風邪の予防と同じです。風邪をひかないこと、万が一ひいてしまっても長引かせないようにしましょう。
そのためには、日常生活の中で以下の点に注意してください。
・風邪やインフルエンザ、花粉症の季節にはマスクを着用する
・鼻うがいを行う
・部屋を掃除して、定期的に換気を行う
・栄養バランスの良い食事を心掛ける
・規則正しい生活を心掛ける
・適度な運動を習慣にする
・冬場やクーラーの効いた室内など空気が乾燥しているときは加湿器を使用する
・体を温める
・ストレスを溜め過ぎない
・水分を摂り過ぎない
また、鼻をすすると鼻水が副鼻腔に入り込んでしまう恐れがあるので、鼻はすすらずかむようにしましょう。
副鼻腔炎の治療方法
副鼻腔炎が疑われる場合、耳鼻咽喉科を受診しましょう。耳鼻咽喉科では、レントゲンか内視鏡やファイバースコープを使って診断が行われ、症状に応じた治療が行われます。
急性副鼻腔炎の場合、1ヶ月程度で完治することが多いのですが、慢性化している場合は半年~1年の長期的な治療が必要になることもあります。
治療法法としては、症状に合わせた薬剤が処方される薬物療法、溜まった鼻水を取り除く鼻吸引や鼻洗浄、副鼻腔内にまで届くよう炎症を抑える薬剤を吸引させるネブライザー療法などがあります。
しかし、薬剤での治療で効果が乱れない場合や、鼻腔の腫れが酷く鼻の穴が塞がってしまっている状態である場合などには、手術が選択されます。
麻酔が行われますし、内視鏡を使用した手術ですので傷跡が目立つようなことはありませんが、できればそうなってしまうまでに完治するよう、早期発見・早期治療したいものですね。
そのためには、規則正しい生活やバランスの取れた食事、適度な運動などでしっかり風邪を予防しましょう。万が一、鼻水の状態などを確認して普通の風邪とは違う点があれば、直ちに耳鼻咽喉科で診察してもらいましょう。